増え続けるデータと高まる消失リスク
スマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真や動画、仕事で作成した重要書類など、個人や企業が扱うデジタルデータは年々増加しています。しかし、NAS(Network Attached Storage)本体の故障、自然災害、あるいはサイバー攻撃といった予期せぬ事態により、大切なデータが一瞬で失われるリスクは常に存在します。
従来のバックアップ方法として、RAID構成による冗長化やクラウドサービスへの保存がありますが、これらは「筐体単位」や「特定の事業者単位」での障害に弱いという課題を抱えています。このような背景から、データの永続的な保全と安全性を確保できる、新しいストレージ技術が求められていました。
NAS-Xとは?分散型ストレージで実現する新しいバックアップ
株式会社WISERAと株式会社NFTDriveは、このデータ消失リスクに対する新たな解決策として、分散型ストレージ対応NAS技術「NAS-X(ナスエックス)」に関する特許を共同出願しました。
NAS-Xは、ネットワークに接続された複数のNASが、ユーザー同士の空きストレージ容量を相互に活用し、データを分散してバックアップする技術の総称です。特定の管理サーバーや単一のクラウド事業者に依存しないことで、耐障害性と永続性を高めた新しいストレージアーキテクチャーの実現を目指しています。

この技術の核となるのは、分散型ファイルシステムであるIPFS(InterPlanetary File System)の活用です。IPFSは、データの「保存場所」ではなく「内容」に基づいて一意の識別子(CID)を付与・管理するため、特定のサーバーに依存せずにデータを共有・取得できる特徴があります。
NAS-Xが提供する主なメリット
NAS-Xは、従来のストレージが抱える課題に対し、以下の4つの主要なメリットを提供します。
1. ユーザー間の相互バックアップによる堅牢性
各ユーザーが所有するNASの空き容量を活用し、1対多(1:n)の構成でデータを分散保存します。これにより、単一の機器が故障してもデータが失われるリスクを大幅に低減し、堅牢なバックアップ環境を構築します。
2. データの暗号化による高い秘匿性
他者のNASに保存されるデータは厳重に暗号化されます。これにより、データを預かる側のユーザーを含め、第三者が内容を閲覧することはできません。プライバシー保護とデータセキュリティが確保されます。
3. 中央管理サーバー非依存の安定性
バックアップ処理はNAS同士が直接P2Pネットワークを通じて行い、特定の管理サーバーを介しません。これにより、サービス提供元の都合によるサービス終了や、特定のリージョン(地域)での障害といったリスクを回避できます。
4. コンテンツ識別子による柔軟な復元
データの「保存場所」ではなく「内容」に基づいて管理されるため、より柔軟かつ高度なデータ復元が可能になります。どこにデータが分散されていても、正確な内容を基に復元できます。
読者にとってのNAS-Xの価値
このNAS-X技術は、私たちのデジタルライフに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
大切な思い出を永続的に残す
家族の写真や動画、子どもの成長記録など、かけがえのない思い出のデータを、NAS-Xは長期的かつ永続的に保全します。単一の機器故障やサービス終了の心配なく、未来の世代にまでデータを継承できるでしょう。
ビジネスデータの安心な保全
企業や個人のビジネスデータも、ランサムウェアやシステム障害のリスクから守られます。中央集権的なシステムに依存しないため、より強固なデータレジリエンス(回復力)が期待できます。
新しいデジタル資産管理の可能性
Web3関連技術との連携も視野に入れられており、将来的にはNFTなどのデジタル資産の安全な保管や、分散型アプリケーションの基盤としての活用も考えられます。これにより、デジタル資産の所有権や真正性をより確実に保護できるでしょう。
今後の展望と期待
NAS-Xはすでにテストトライアルおよび実証検証を終え、正常な動作が確認されています。今後は、株式会社WISERAが展開する家族・個人向けの思い出保存・データ継承プラットフォームや、株式会社NFTDriveが取り組む分散型ストレージおよびWeb3関連技術の中核として活用される予定です。
個人利用にとどまらず、法人や自治体、コミュニティ向けのデータ保全用途への展開や、パートナー企業との連携も視野に入れられています。この革新的な技術が、私たちのデータ管理の未来をどのように変えていくのか、今後の動向に注目です。
将来的に製品化された際には、ネットワーク参加者の信頼性や、初期設定の簡便さ、既存のNASデバイスとの互換性などが利用体験を左右する要素となるでしょう。これらの点がどのように解決され、一般に普及していくのかが期待されます。
関連情報
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株式会社WISERA 公式サイト: https://www.wisera.link
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株式会社NFTDrive 公式サイト: https://nftdrive.net
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株式会社WISERA 関連プロジェクト: https://readyfor.jp/projects/wisera


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